2011/08/25
2011/08/11
「19 POESIE PER 19 DISEGNI DI GRECO 」 ・・・三ツ村繁
無題 三ツ村繁
夕焼が 遠くをはしる列車の窓
ガラスにのっていってしまうと
急に夕暮が濃くなってきて そ
のさむさのなかにいると枯葉が
ふりかゝってくるので なにか
しらたいせつなものをおとして
るような気がしているのに そ
れがわからないので さっきか
ら雑木林のなかでうろうろとな
にかをさがしているみたいな風
のあとをついていくと 暮靄の
ふかい奥に 仄仄とみえている
女影のあたりで風は沈んでしま
い その蒼しろくみえかくれし
てる女はながい髪をとかしなが
ら もうすこし暗くなりました
なら わたくしはみんなきてる
ものをぬいでま裸になってから
なにかに化身するのですと た
めいきみたいな呪文をいつまで
もとなえつづけていたのが 急
にううううとけものごゑに変わ
ると 殺意をこめた銃音がして
ま暗闇になってしまい もうそ
こは虚脱するときのあをくさい
匂いがかすかにのこっているだ
けのしじまなのである
2011/08/05
お約束の通り、時々一人づつ。「19 POESIE PER 19 DISEGNI DI GRECO 」
エミリオ・グレコ素描
エミリオ・グレコの素描に寄せる即興 谷川俊太郎
どうして目をつむっているのか 私にはわからない
露台に咲いているきづたの花や 平野の北に連なる山々
尖塔の上の鳩の群まで もう見飽きたというのか
それともきみはただ 私の顔をみたくないだけなのか
だが目はつむることができても 耳はふさげない
そうして愛らしい鼻も 息をせずにはいられないのだ
路で遊ぶ子どもらの声が 塗りたての漆喰のにおいが
きみの生きるのは昨日でも明日でもない 今だと教える
それならきみを傷つけた私の姿を はっきりと見るがいい
私をきみの記憶の密室から この明るい風景へ解き放ち
優しさとむごさが 蔓草のように縺れあう遠近に置け
太陽に向けられたきみの美しい顔は あまりにも無防備で
その純潔がむしろすべてを 無に近づけるのが怖ろしい
きみの目の中の哀しみにこそ 私はすくわれるのに
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