長いと思った一か月も今日で終わりです。
皆様のご来廊をおまちいたしております。
机上の馬
架空ではない馬を架空で作る。
昔々、北の平原では人間は死ぬと
あの世から馬が迎えにくると信じられていた。
馬は死者を冥途の入り口まで運んでくれる。
神の使いの馬はどれも体つきが立派で銀に輝く美しい馬たちだった。
その中でまだ若くて細くて頼りなくて失敗ばかりする馬がいた。
名前はシンバ。
シンバは死んだ人間しか運んではいけないのに
独り者の老人と同じ時に死んだ飼い犬まで乗せて連れてきたり、
寄り道をして遊んでいたら時間が無くなり、迎えに行かなかったり、
はしゃぎすぎて死者を途中で落としてきたりするような馬だった。
でも人間たちは立派な光り輝く銀の馬たちより
頼りないシンバに迎えに来てほしいと願っていた。
冥途までの道程が楽しそうに思えたからだ。
それで自分が死んだらシンバが迎えに来てもらえるように
シンバの像を作った。
輝く銀のシンバの像を。
そして少しずつ忘れていった。
死んだ人間を馬が迎えに来ることも。
シンバが迎えに来てくれるように願ったことも。
シンバの像を作った事も。
これは一つの私の空想。
田中智子